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分散型SNSが普及するかどうかの考察

WEB動向考察

2023年10月6日

分散型SNS

いま、分散型SNSという新しいSNSへの流れが話題になっています。

分散型SNS自体はMastodonをはじめ、各種サービスは数年前から立ち上がっているのですが、最近のイーロン・マスク氏の「X」買収から始まったサービス変革に端を発していろんな議論が生まれています。また、ブロックチェーンに見られるweb3への流れも大きく後押しする形で、いよいよ大きな変化が起きそうな前夜といった感じでしょうか?

そもそも、分散型SNSとはなんなのか?

ざっくり言えば、自前のSNSを構築し、それらSNSの各投稿が連携される新しいSNSの形態のことを言います。

広義には「Fediverse」とも言われ、ツイッターなどのマイクロブログ的なSNSの投稿以外にも、ブログの投稿も含めた連携が可能で、それぞれ、独自に管理運営されたサーバと、SNS。そして個々の投稿をつなぐネットワークのことを言います。

分散型SNSは特性上、データも管理体制も自分の考えにあった分散型SNSサービスを選ぶことの自由度は増し、既存のSNSに縛られずサービスを享受できる仕組みです。

さらに、個人も、企業も、いままでツイッターやインスタなどのSNSサービスに投稿していたものを自前、または分散型SNSを謳うサービスのサーバ上に独自のSNSを構築、投稿します。そして、それらを束ね、統合されたさまざまな分散型SNSサービスのタイムライン上に投稿も受信も可能なので、サービスの垣根を超えたコミュニケーションができます。

そのような新しい分散型SNSサービスが次々生まれてきています。

分散型SNSは根付くのか?

さて、そこで、私が気になるのは、既存のSNSサービスから、新たに生まれつつある分散型SNSへのシフトが進むのか? また、存続していくのか?

当然、どうなるかはわからないですが、現時点での状況と少し先にくる予測的な見立てをしてみたいと思います。

①現在の各SNSサービスの問題点

そもそも、現状のSNSへの問題意識があり、分散型SNSという考えが生まれてきています。その問題意識の捉え方の強さで分散型SNSへのシフトの行方は決まるのかなとは感じます。

例えば、現在のSNS事業者は、個人が投稿するコンテンツをベースに広告表示なり、機能なりを販売して運営しています。それらの収益を元に多くのユーザーはサービスを利用できています。ただ、逆に、収益性を考えるが故に、本来は一番大切なユーザーを顧みないサービスになってしまったりすることが最近目立ってきたということはあると思います。

さらに、ユーザーの個人情報の扱いであったり、誹謗中傷やヘイトな投稿への事業者の対応についての問題意識も最近は強まっているとは思います。

ただ、ヘビーユーザーならともかく、多くの人は、そこまでSNSサービスに対しての問題意識が強いかと言えば、個人的な肌感覚では、そうでもないなとは感じます。

「まぁ、暇つぶしに、友達とか好きなアーティストの投稿をチェックできればいいかな」的なライトユーザーにとっては、現状の問題意識はさほど強くないかなと感じます。

②SNS疲れやSNS離れ

私自身、仕事がらSNSは個人的にも利用していますが、いわゆる「SNS疲れ」気味かもしれません。SNSはもういい、もしくは、あまり近い人との強い繋がりのあるサービスへの投稿は避けたいという感覚はライトユーザーでも多くの方が感じているようには思います。

また、FACEBOOKなど、ユーザーがおじさんばかりとか、利用しているユーザーの特性などから、若者が当時新たなSNSであったインスタグラムに移行していったなどの流れも起きました。

そもそも、SNSをやめてしまう方や、新たなSNSへ移行するという動きは、繋がっているコミュニティーの関係性の強弱やコミュニティへの依存度などによって、新たな仕組みへシフトする要因にはなり得ると感じます。

ただ、分散型SNSも、既存のSNSも、特性上はコミュニティを作り出すことが目的のツールではあり、シフトすることで、これらの問題解決には至りません。

逆に、こういった問題を回避するために、既存のSNSの場合は、裏アカウントなど、複数のアカウントを使い分け、コミュニティへの関わり方を都合によって変えながら問題回避はできていると言えるかもしれません。

一方、分散型SNSの場合、複数のアカウントを切り分けるような問題回避が手軽にできるかと言えば、現状では面倒になる印象はあります。どちらかと言うと、特定の特徴をもったSNS(サーバ)が乱立することになるので、自分にあった、コミュニティーに出入りするような形で、繋がりを切り分けるイメージになっていくのではと感じます。

どちらにしても、SNSの関わり方の変化が有るか無いかでシフトしていく流れは変わってくるでしょう。

③資金調達やマネタイズの問題

既存のSNSは広告など運営上は収益を得、ビジネスとしては成り立っており、持続性の部分では今後はわかりませんが、今のところしばらく問題がないように見えます。

一方で、分散型SNSの場合、資金調達から、その後のマネタイズまで、どうするのかは大きな課題であり、分散型SNSへのシフト、また継続運営するためにはまずクリアしなければ行けない問題でしょう。

まず、資金調達の前に、投資家を含め、多くのネットユーザーが分散型SNSに可能性を見出してもらえるようなコンセプトが必要にはなってくると思います。

例えば、FACEBOOKやインスタ、TikTokなどは、当初若者たちの真新しいメディアに対しての訴求力があり、興味やワクワクなど好奇心がユーザー動員や投資家たちからの資金調達実現にとって大きな原動力であったと感じています。

一方、分散型SNSのコンセプトはどちらかというと、好奇心というよりは思想的です。

いわゆる中央集権的な既存SNSの制約に対して、非中央集権的で制約を受けないユーザー主導のサービスの実現という思想的なコンセプトが原動力です。

個人的には、大いに賛同できるコンセプトですが、前述の多くのライトユーザーがそこまで、その思想的コンセプトに賛同できるかは疑問が残ります。分散型SNSのコンセプトは、思想的で社会課題の側面が大きいため、直接的で個人的な課題や要望としては捉えにくいかもしれません。

おそらく、鍵となるのは、既存SNSなどを発信の場としてきたコアユーザー、クリエイター、インフルエンサーたちの動向かもしれません。既存SNSの中央集権的な制約に異を唱え、自由で制約の少ない発言や発表の場を実現したいという思想的コンセプトに賛同し、率先して分散型SNSへシフトした場合は、分散型SNSへのシフトの大きな原動力になるのではないかと感じています。

④既存SNSの分散型SNSへの流れとプロトコル議論

既存SNSが分散型SNSへシフトしていく流れが少しづつ現れており、シフトチェンジへの強い流れを生み出す可能性は大きいと思います。

例えば、メタ社が突如スタートさせた「Threads」ですが、こちらは、分散型SNSを目指して構築されています。現時点では、多くの分散型SNSが採用している、ActivityPubというプロコトルを採用し、実装していく予定とされています。プロトコルとはデータ通信における規格です。これにより、同じプロトコルを採用している場合、連携が可能となり、例えばThreadsであれば、MastodonなどActivityPubを採用している分散型SNSと連携が可能となります。

ちなみに、分散型SNSのプロトコルはActivityPub以外にも、いくつかあります。大きく分けると、現在では、

  • ブロックチェーンを使わない分散型SNSプロトコル:ActivityPub(開発元:W3C)
  • ブロックチェーンを使った分散型SNSプロトコル:Lens Protocol(開発元:Aave)
  • 独自の分散型SNSプロトコル:ATprotcol(開発元:Bluesky PBLCC)

となります。

最後のATprotcolはBluesky PBLCCが推進するプロジェクトで、元ツイッターCEOのジャック・ドーシー氏が率いる組織です。現在は、ツイッターを離れているので、SNSサービスとしては新規参入組なのですが、そもそも、ツイッターの資金提供を受けていることや、元ツイッターのCEOが率いている点を考えると、既存SNSの分散型SNSシフトの事例として挙げられると思います。

ThreadsとBluesky に見られる既存SNSサービスによる分散型SNSシフトの流れやコンセプトは、純粋に新規で立ち上がっている分散型SNSと比べると、若干のコンセプトや考え方やシフトしていく流れに違いがあります。

例えばThreadsに対して、Mastodonは「タイムラインに広告を掲載することもないし、外部の連携されたサービスから個人情報を取得することもない」と、現在のThreadsとの違いを明確にし、既存SNSとの本来の分散型SNSが目指すコンセプトの違いを指摘していたりします。

参照)GIGAZINE

「Twitter対抗の分散型SNS「Threads」が登場することでMastodonは変わるのか?をMastodonのCEOが解説」


ロチコCEO(Mastodon)は「私たちが知っていること」として、「ThereadsはFacebook・WhatsApp・Instagramとは別のアプリです。これはThreadsのユーザーベースが既存のプラットフォームから分離されることを意味します。ただし、InstagramユーザーはInstagramアカウントを使用してサインインできます。EUでは使用できず、起動時認証をサポートしません」と述べています。

ロチコCEO(Mastodon)は「MastodonはメールやIPアドレスなどの個人データを、アカウントがホストされているサーバーの外部に配信することはありません。Mastodonのソフトウェアは、サードパーティーのサーバーは信頼できないという合理的な前提に基づいて構築されています」と述べ、登録・ログインしていないサーバーが個人情報を取得したり追跡したりすることはできないとしています

一方、Lens Protocolを代表とする、ブロックチェーンによる分散型SNSも昨今のweb3の流れを受けて分散型SNSの大きな流れを作っていく可能性を秘めています。ただ、ブロックチェーンを使ったプロトコルは他のプロトコルとは、同列に扱うのは難しく、分散型の考えは同じでも、まったく違った流れとして見たほうがいいでしょう。

個人的には、既存SNSからの分散型SNSと新規分散型SNSが、協調しながらプロトコルの開発と利用を進めていってほしいと思います。おそらく、それぞれ違うプロトコルを採用することは、どの分散型SNSにとっても、ユーザーにとってもいい結果になりません。プロトコルのような規格はサービスの外側に置いておくのが、今のWEBの流れの基本です。W3Cのような中間的な規格団体が調整役となって、よりよいプロトコル規格を作って欲しいと思います。

どちらにしても、既存SNSがどう今後の分散型SNSの方向性に寄与するかは大きなシフトチェンジの要因になることは間違いないでしょう。そして、うまく新旧の勢力が協調して軌道に乗った後、もしくは同時に、分散型のプロトコルをブロックチェーンで行うか、行わないかの議論になっていくかもしれませんね。

まとめ

どんな原動力で分散型SNSへのシフトが起こるかは結局「神のみぞ知る」ですが、大きな流れが起こっていることは確かです。

ただ、思うことは、昨今のジャニーズ事務所問題を見ていても思いましたが、各タレントが抱える個別問題を解決するときに、組織である事務所、もしくはマスコミ(社会)が持つ制約が大きく課題解決のための行動を妨げている状況があったんだと個人的には感じました。

結局は、組織なり社会もひとつの人格として、総意としての意思をもち課題解決に取り組み、それを個人の課題解決につなげるという考え方もやはり重要であると感じます。

SNSもすでに、公共の情報インフラとして機能しだしています。その原動力として、思想的ではあっても、社会解決を起因として個別の課題解決も実現し、よりよいサービスにシフトできればとても理想的ではあると感じてはいます。

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